これは、ふたりだけの秘密です
「慣れない車でも、真理亜は大丈夫かな?」
「気晴らしになりそうなおもちゃもバッグに入れておきますね」
「ありがとう、日菜子さん」
「あの、お迎えはどなたですか?」
「……片岡さん」
「えっ? 今日も?」
期待に輝く顔を見せられたが、怜羽の気分は沈んでいた。
彼に誘われて連日会う約束をしてしまったが、秘密を抱えたままだ。
真理亜の産みの母親は自分ではないと郁杜に告げていないから心苦しかった。
「親戚みたいなものだから……」
「パパじゃなくて、親戚ですか?」
日菜子が『あれ? 話が違う』という顔をした。
つい親戚だと口走ってしまったので、怜羽は慌てて誤魔化した。
「日菜子さんには、伯父さんがいる?」
「ハイ! 父方と母方と……。我が家は親戚が多いんです。
皆で集まるとものすごく賑やかなんですよ。
子供のころは伯父さんたちにお年玉をもらえるのが嬉しかったの覚えています」
「そう……」
賑やかな親戚の集まりなんて、怜羽には縁遠いものだった。
ふと、郁杜の顔が浮かんできた。
(あの人は、真理亜の本物の伯父さんなんだ)
東京駅で別れたら、そこで片岡郁杜とも縁が切れると思っていた。
(でも、今日も彼と会うことになってしまった)
怜羽と真理亜に血の繋がりは無いが、
郁杜は真理亜の父親の兄だから、正真正銘の伯父だ。
(なんだか、悔しい……)