これは、ふたりだけの秘密です


郁杜は連絡のとおり、10時前に小笠原家に到着した。
案の定、チャイルドシートの準備をしていなかったので日菜子の出番だ。

「すぐに取りつけますね」

後部座席に慣れた手つきでチャイルドシートを乗せる。

「ああ、すまない。手伝うよ」

いつも完璧に見える郁杜が、ちょっとした失態に落ち込んでいるのが意外だった。
彼は今日はスーツではなく、カジュアルなストライプのシャツだ。
兄の孝臣の同級生にしては、少し若く見えた。
日菜子に対しても偉ぶるでもなく、自然に会話しているのに好感が持てた。

真理亜を抱っこしたまま、怜羽はじっと郁杜の様子を眺めていた。

昨日、片岡家の事情と真理亜の本当の父親が颯太だとわかってからは、
初対面の時の彼に対する嫌悪感はすっかり無くなっていた。

(お母さんや颯太さんにも優しかった。この人は家族思いなのかもしれない……)




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