これは、ふたりだけの秘密です
「真理亜ちゃんは、生後半年くらいですか?」
優杏は実際に赤ちゃんを見るのが珍しいのか、真理亜から目を離さない。
「はい。12月生まれなので、もうすぐ7か月になります」
「フランス人形みたい……」
それは郁杜の胸に残る言葉だった。
初めて見た日から、真理亜はどこか異国の香りがするのだ。
颯太と怜羽の子にしては、色が白くて瞳も青っぽい。
優杏もそんな印象を持ったとしたら自分の印象も間違いではなさそうだ。
名前からの先入観か、まだ赤ちゃんだから色素が薄いのかとも思ったが
なんとなく"フランス人形"という言葉で納得した。
今ごろになって、郁杜はいくつかの疑問を感じ始めていた。
最初は自分の子だと決めつけられて動転していたから、
真理亜については深く考えていなかった。
昨日の京都では男女の修羅場になるかと覚悟していたのだが、
あっさりし過ぎて、子をなすほどの深いかかわりだったとは思えない。
怜羽と颯太はなにを話したのか、気にはなったが聞けずにいた。
(ゆきずりの関係で妊娠したとか……?)
だから怜羽は、ひとりで育てると言い張っていたのだろうか。
颯太に子どもがいることを告げなかったのは、愛情がないからか。
(まさかな……)
郁杜はその疑問を、記憶の隅に押しやった。