これは、ふたりだけの秘密です
「驚いたでしょ、怜羽さん。お義兄さんは心配性で過保護な方なの」
「ひとつしか違わない僕のこともガキ扱いするほどなんです」
煌斗夫婦はフォローしようとしているが、三谷は笑っている。
「きっと、長男だから責任感がお強いんですよ」
弟たちになにを言われても、郁杜は怜羽との話を止めなかった。
ひとしきり尋ね終わると、納得したように呟いた。
「それで、マンション探しも急いでいたんだ……」
小笠原の家では怜羽は伸び伸びと暮らせない。
仕事にも差しさわりがあったのだろうと郁杜は思い至ったようだ。
「はい。事務所兼自宅になりそうな物件が理想なので」
「中野に絞っている理由は?」
「昔からお世話になっている雑貨店が中野の駅近くの商店街にあって、そこを今は臨時の事務所に使わせていただいているので……」
「雑貨店?」
「服飾関係の雑貨店です。後を継ぐ人がいないからお店を閉めるとおっしゃっていたんですが、私の事務所としての仕事をお願いして営業を続けてもらっています」
「なるほど……」