【完結】私、実はサレ妻でした。


「子供たちは、うちの両親に預かってもらえばいいよ」

 と、夫は私に言うけれど。

「……そこまでしてまで、旅行なんて行きたくない」

 夫にそう告げると、夫は不思議そうに「……実乃梨?どうした?」と顔を覗き込んでくる。

「ねえ、あなた」

「ん?……どうした?」

 私は夫の発言に腹が立った。ムカついてしまった。

「私ね、あなたのことは愛してるの」

「……実乃梨?」

「でもね……。愛してるからこそ、許せないこともあるんだよ」

 私が言った言葉を、夫は理解したのかなんて分からない。
 でも私は、今の気持ちを夫にぶつけるしかなかった。

「実乃梨……。俺、君に何かしたか?」

「自分で分からないの?……胸に手を当てて、よく考えてみたら?」

 私の怒りはしばらく治まりそうになかった。
 嘘を付いてまで他の女と浮気して、家に帰れば堂々と家族と接している。
 そんな夫のことを、私は許せる訳がない。

「実乃梨……」
  
 そんな夫は、私に触れようとしてくる。

「やめてよっ……!」

 私はそれを拒んだ。

「実……乃梨……?」

「私に触らないで……。あなたに触れてほしくない」

 夫のことを愛しているなら、触れてほしいと普通は思うだろう。……でも今の私には、そんなことも許したくない。
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