【完結】私、実はサレ妻でした。


 何が私だけよ。堂々と浮気してるくせに……。
 あなたの言葉なんて、もう何も信じない。……信じられない。

「実乃梨……」

 そのまま夫は、私にキスをしようとしてきた。

「っ……ごめん……」

 でも私は、夫の体を押してそれを拒んだ。

「……いや、俺の方こそごめん」

 夫の表情は、今まで見たことがないくらい驚いていた。
 今までだって私は、夫からのキスやセックスの誘いを断ったことなんてなかった。

 ……今日初めて、私はそれを拒んだ。

「あ……あのね、あなたっ……」

 拒まれたことに相当ショックを受けているのか、夫の表情はとても悲しそうで、とても寂しそうだった。
 
「実乃梨、そういう日もあるんだろ? 気にするな」

 と言いつつ、一番気にしているのは夫の方なのだけどーーー。

「そうだ。ねぇ、あなた」

「……ん?」

「子供たちがね、今日保育園で絵を書いてきたのよ」
 
 私は出来るだけ、明るく振る舞うことにした。 夫の浮気を疑っているなんて思わせないように、なるべく明るく振る舞うことにしたのだ。

「絵を?」

「そう。 見てよこれ」

 私は引き出しから二人の絵を取り出して、夫に見せた。
 
「これって……」

「ママとパパ、だってよ。上手に書けてるよね」

「……ああ。上手に書けてるな」
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