【完結】私、実はサレ妻でした。


 ううん、多分違う。 私の勘ではまず、宍倉円香が彼氏にフラレたなんて言うのはウソ。 
 あれは多分、夫に近付くための口実だ。

 自分が弱っている所を見せれば、心の優しい夫は必ず慰めてくれる。きっとそういう魂胆だったんだと思う。
 夫を手に入れたい円香が全部仕組んだ罠で、夫はすっかりそれに騙されてしまったってことなのかも。

「……そしたら円香、その時の俺たちの音声を録音してたんだ。 そのことで、俺を脅してきて……」

「……脅す?」

 え、どういうこと……?

「実乃梨にこのことバラされたくなかったら、私の言うこと聞けって……。それが円香との関係を、続けることだったんだ……」

 ……何言ってるのか、全然分からない。宍倉円香が脅してたなんてそんなの、信じられない。
 話をでっち上げるのはやめて……。そんなことされても、私の心は変わらない。

「……そんなの信じられない。あなただってそれに同意してたんでしょ? 脅されてなんて、そんなの信じられないわ」

「本当なんだ……! 円香は俺を支配してたんだ。円香に関係を終わらせたいと言ったら、実乃梨に全部バラすと言ってきたんだ。……だからこの関係を続けることしか、俺には道はなかった」
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