【完結】私、実はサレ妻でした。


「……ごめん。本当にごめん、実乃梨……。傷付けてごめんな」

 夫はグッと唇を噛み締めていた。今にも泣きそうな表情をしていた。

「……私たち家族は、幸せだったと思ってたよ。私の理想の家族が出来上がっていたと思えてきてたのに……。あなたが全部壊した。 あなたのせいで、私たち家族は……。もう終わりね」

 やっぱり私は、あなたを許せない……。私はあなたともうやっていけない。
 子供たちにはなんの罪もない。だけどあなたと家族としてもう一度やり直すことなんて、私には出来ない……。

 そんなに忍耐強くない。私は強くないから、そんなに割り切れないの。

「……実乃梨、頼む。もう一度だけ、俺にチャンスをくれないか」

「チャンス……? 無理よ、もう無理」

 あなたは、自分が何言ってるのか分かってるの……?
 もう一度やり直したいだなんて、おこがましいにも程がある。

「信じてもらえないかもしれないけど……俺は本当に、実乃梨のこと愛してるんだ。実乃梨とこれからも夫婦として、家族として、本気でやり直したいって思ってる」

「……やめて。もう何も聞きたくない」

 あなたの言葉は、ウソだらけ……。
 もう何にも信じない。
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