明日はきっと、晴れ。
美琴は手際よく材料を切り始めた。
何を悩んでいたのかは結局わからなかったけれど、
楽しそうに料理を始めたのでまあよしとしよう。
美琴の家族は海外で暮らしているらしく、
翼の倉庫で生活している。
わたしはほとんど毎日この倉庫に来ているが、
美琴はわたしたちとは違う学校に通っていて、
最近美琴の帰りが遅くてなかなか会えていなかった。
美琴は料理がうまくて、会えると手作りのお菓子を食べさせてくれる。
料理を作るのはわたしか美琴のどちらかが多かったけれど、
料理人を目指している朱里くんも手伝ってくれること増えた。
「ね~?今日何人くらいいた?」
カレーのルーを溶かしながら美琴が眉間にしわを寄せて聞く。
「ん?多分30人前後だけど」
わたしはご飯を皿に盛りながら答える。
そうよね~と鍋の蓋を閉めてどこからかともなく2つの袋を取り出す。
「今日ね、お昼暇だったから調理室でクッキー作ってきたんだけど、
きれいにできたの20個しかないのよね」
はい、と袋の口を開けてわたしと朱里くんにきれいに焼けたクッキーを差し出す。
美琴の手作りお菓子は本当に本当においしいの。
おいしいだけでなく、形も色もきれいで、
お店に並んでいるような、そんなクッキー。
天才だと思う。
小さめのクッキーを1つ袋から取り出して、口に放り込めば、
美琴のあたたかさが口いっぱいに広がって、幸せな気分になる。
わたしには本当の家族がいないから、
ここはいろんな感情を教えてくれる大切な場所。