俺の世界には、君さえいればいい。
*ゆっこのちから*
これでいい、これでいいの、これじゃなきゃだめなの。
何度、何度と自分に言い聞かせた。
櫻井くんの悲しそうな顔も、苦しそうな表情も、そうさせてしまったのが自分だったとしても。
それでも関わることでそれ以上つらい思いをさせてしまうくらいなら…と。
私は、櫻井くんから離れることを決めた。
「おばあちゃん、これ…あげる」
「あら…?お友達に渡すものじゃなかったの…?」
「ううん、もう…いいの」
「…かなの…?」
お母さんと一緒で甘いものが大好きな祖母に無理やり渡して、部屋に閉じ籠った。
あ、「ただいま」を言うの忘れてた…。
挨拶は由比家のマナーというよりは人としての最低限だと、小さい頃から教えられてきたのに。
もう……ぜんぶに気力が起きない。
やる気もなくて、ただただ喪失感と虚無感がぽっかり空いた心に残っただけ。
「…渡したかったなぁ…」
じわっと浮かんだ涙を埋め込むように、ベッドに顔を押し付ける。
気持ちを伝えたかった。
好きって、言いたかった。
でも、最後にありがとうって言えた強さだけは自分で自分に褒めたい。