俺の世界には、君さえいればいい。
*epilogue*
「ねぇ、あのウワサ知ってる?」
「ウワサ?剣道部2年エースのクールジャスティス櫻井先輩に婚約者がいるってウワサ?」
「そう!本当なのかなぁ~」
「なんかね、本当らしいよ?彼女さんにはすっごい優しいんだって!」
「えぇ~!いいなぁ~!」と。
そんな声を出す新入生とのすれ違い様、どんっとぶつかってしまった。
「あっ、ごめんなさーい」
「わっ、私もごめんなさい…!怪我とかは……」
ペコッと頭を下げて上げたとき、すでに女の子たちは私の前にはいなかった。
「じゃあその彼女さんって誰なの?きっと櫻井先輩なんだから3年の横山先輩とかでしょ?」
「それが違うんだってー。影がうっすい人だから名前も不明」
「え~、なにそれ色んな意味で気になる~」
先輩にぶつかったとしても彼女たちがそこまで気にもしなかったのは、生徒の少ない廊下だからじゃなくて。
ぶつかった相手が凄まじく地味だったからだと思う。
それは私が害もなく、怖くもなく、なんていうかナメられてるということで。
それにしても最近の1年生ってあんなに大人っぽいんだ…。
先輩かな?って、逆に私が思ってしまったくらいだ。
「……クールジャスティス…、主計くん、また新しい異名が付いてる…」