ノート
昼が夕方に差し掛かる頃、昼飯を考えていたら長文メールが来ていた。
「応援に対して、その言い方! あなたって失礼ですね。
晒し者にして楽しんでるんですか。
私は確かにここに来てますけど客にやめろなんて言うとみんなの空気がわるくなります。
貴方中心で世界回ってる訳では無いので。上手な方を見つけては根拠が無いのに「トレスだ」とか「シンクロ!?」とか一々言うようなやり方はやめた方が宜しいかと。
いや、やめてください。皆さんに迷惑です。こういうとこ向いてないと思いますよ、引退をオススメします。てか被害妄想激しすぎませんか?
盗作されてるとか何とか言ってますけどあなたが盗作してますよね。間違いなく。お相手にも迷惑なのでやめた方がいいですよ。
私もなんかよくわからないサイト見ましたけど貴女には私のこと何の関係もないですよね。精神疾患持ちの人間が書く小説なんて面白くないので今すぐ消していただきたいです。 」
確かに俺も晒し者にされた気分になったからやめて欲しいと言ったのだがあれは応援だったのか。
それに、プロフィールに精神疾患持ちと書いた覚えはないし……上手な方を見つけたわけではなく、もしかしたら嫌がらせをしている彼らかもしれなくて気になるアカウントに目が止まるだけなのだが……
間違いなく?
なにが?
「励ましてくださりありがとうございます。
俺のためということなので、
俺の今の気持ちというのを汲んでいただけると期待しています。現時点のそういった応援は望んでいません。
感想などをいただける方がより直接の励みになります。どうかご理解ください」
返信しておいたが、それからの返事は期待できなさそうだった。
大量の俺のネタがあった。
それが感想だった。
それからも、ずっと、更新内容はやたらとストーカー染みていた。
応援なんて口ばかりで。
俺がやめてほしいと言うのを無視したアカウントは数時間後に今度は、内設された掲示板で俺のニセアカウントとやりとりを始めていた。
「あなた失礼ですよ!ネタにしないで!」
というのが成瀬になっている
「ごめんなさい」
と、俺のニセアカウントが謝る。設立の日付はまだ新しく、フォローの数も少ない。
俺とは違う。
こんな自演、そこまでして、いかなるときでも非を認めたくないのか……
すぐにいくらかメッセージが届いた。
「気にしないで」
「あいつはすぐアカウント消して似たようなことする常連だよ」
「フォロー、みんな外国ww買ってるから」
みんな知っているけど、じかには関わりたくないという感じだった。俺も関わりたくないけど、ニセアカウントまで作ってやりとりするやつだから嫌でも、アカウントを自演してでも強制的に引き込むつもりだ。
もはやこれは人としての尊厳が無いということな気がした。カンベも、成瀬も、マイも、みんな頭がおかしかった。
助かりたくないわけではないけど、出版社とかには手が回っているみたいでカンベもそんなようなことを言っていた。
問い合わせても無視されたりもした。
この様子だと、恐らくは検証のためにどこかに出したところで住所だけ抜きとって成り済ましと隠蔽だろう。
誰かが来るのを待つしかない。自分の作品を思い出した。
「作者と が幸せになりますように」
と、コメントに書いていた人がいくらかいたから、メッセージを書いた。
あまりいい内容も浮かばずそのままのことを書いた。
「ありがとうございます。
俺は、幸せになれない人間ですが
それを願われるだけでも
貴重なことです。」
次の日来ていた、メッセージを見た。
「幸せ、本気で願うわけないじゃん。書籍化しまーす! ネタ提供ありがと」
「悪魔がおこがましい」
「ネタ借りますね!」
ネタを借りるための綺麗事。
それが、あの言葉たちらしい。ネタ提供をしたわけではないけど、審査員は見抜かない。たとえ見抜いても封じ込めるだけだろう。
「みんな嘘をついてます!」
「あの書籍は、偽善の産物です!」
大声で叫びたかった。
ぼーっと、腕を見る。
少しの間リストカットをやめていたからだいぶん塞がって気にならないレベルになっていた。そんなことを考えながら、どうしたらいいのだろうかと、思った。
きっと今後、誰かが連絡してくることもない。
抵抗なんて無意味だ。
でも。無意味だとしても、俺には意義がある。
少しでいい、偽善の産物だと意地でも証明してやりたい。
当事者が本当は苦しんでいる。なのに私欲のためにネタに使う汚い集団だってこと。