旦那様の裏の顔
「あんなに若い子がお嫁さんに来てくれるなんて、挨拶に来てくれた時は驚きました」

「私も、まさか担任の先生を連れて来るなんて驚きでした。でも、二人ならきっといい夫婦になりますね」

結婚式に参列している互いの母親が話す。蕾の母親の目には、薄らと涙が浮かんでいた。

「先生は、蕾のヒーローですから」

母親の言葉は正しい。蕾は優斗の存在がなければ、もうこの世界から自ら旅立っていたかもしれないのだ。

「さあ、そろそろ時間だね」

「はい」

二人は寄り添い、本殿へと歩いて行く。そこには幸せが満ち溢れていた。



三年前、高校生になったばかりの蕾は、他の生徒は楽しんでいるはずの高校生活を楽しめず、暗い表情で学校へ向かっていた。

登校していると、同じクラスの人がクスクスと笑う声が聞こえてくる。買ったばかりの制服は、ボロボロにされて汚れてしまっていた。そう、蕾はいじめを受けているのだ。

いじめられるようなことをした覚えは、蕾には一切ない。だが、入学式を終え、担任の先生が紹介されてしばらくしてからそれは唐突に始まった。
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