旦那様の裏の顔
思い切りぶつかった背中が痛む。だが、女子たちはお構いなしに蕾の髪を強く引っ張る。

「言うこと聞かない奴隷なんて、意味ねぇんだよ。役に立たないなら死ね!死ね!ここで今すぐ死ね!」

「死〜ね!死〜ね!」

周りにいた女子たちも手拍子に合わせて「死ね」と言い始め、蕾の目から涙が零れ落ちていく。

「うわぁ〜、泣いちゃったじゃ〜ん。やりすぎ〜。本当に死んだらどうするの?」

「あ〜、そうだよね。ごめんね愛沢ちゃん、死なないでね?本気で言ったわけじゃないから。死なれたら、うちらが責められるじゃん?」

ケラケラと笑いながら、女子たちは帰って行く。残された蕾はその場に崩れ落ち、声を押し殺して泣く。家では家族に心配をかけるため、泣かない。いじめっ子たちから解放された後、こうして泣くことが一日に一回あるのが当たり前になっていた。

「……何で、何でこんな辛い思いをしなきゃいけないの?」

何もしていないのに、ある日突然地獄に突き落とされた。楽しいと信じて疑わなかった高校生活は、あっという間に絶望へと変わってしまう。
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