旦那様の裏の顔
「……もう、生きている意味ってないのかな?」

しばらく泣いた後、蕾の瞳からは光が失われていた。そのままフラフラとした足取りで窓まで歩く。

蕾たちの教室は三階にある。三階から飛び降りれば、死んでしまうだろう。

『死〜ね!死〜ね!』

言われた言葉が蘇り、蕾はギュッと強く窓の手すりを握り締める。こんな苦しみをあと二年も耐えるなど、考えたくもない。

「そんなにお望みなら、死んでやるわ!」

あの世からあいつらを呪ってやる、そう思いながら蕾が飛び降りようと上履きを脱ぎ、足を窓にかけた瞬間、「何してるの!」と言われながら腰に腕が巻き付き、引き戻される。

「ッ!」

蕾が振り返れば、蕾の担任であり、英語を教えている優斗が荒い息をしながら蕾を捕まえている。そして、「何をやっているんだ!危ないだろ!」と怒鳴られた。

「私だって、やりたくてやってるんじゃない!」

怒鳴られた悔しさや怒りで、蕾は声を荒げる。優斗の腕から逃れ、乱暴に涙を拭った。

「死ねって言われたから、死ななきゃいけないの!死にたくなくても、死ななきゃいけないの!」
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