旦那様の裏の顔
蕾がそう泣きながら言うと、優斗の目が見開かれる。そして、泣きじゃくる蕾は優斗に優しく抱き締められ、頭を撫でられていた。

「……気付けなくてごめん。何があったのか、一から全部教えてくれないかな?」

蕾は椅子に座らされ、その向かい側に優斗も座る。蕾は逃げ道を考えたが、誤魔化すことはできないと思い、いじめられていることを全て話した。

ゴミを靴箱に入れられること、生卵をぶつけられること、悪口を言われること、わざとぶつかられること、お金を脅し取られていること、万引きを強要させられそうになったこと、死ねと言われたこと、全てを包み隠さず話した。

誰にも言わず、一人で抱えてものを話していくたび、心の傷が抉られて止まっていた涙が蕾の目からまた溢れてくる。そんな蕾の涙を自身のハンカチで拭い、優斗は「ごめんね」と呟く。

「気付いてあげられなくて、本当にごめん。守ってあげられなくて、ごめん。辛かったし、苦しかったよね。もう戦わなくていいよ。先生にあとは任せて」
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