旦那様の裏の顔
『もしもし』

すぐに相手は出てくれた。若い女性のようだ。優斗はフッと笑い、ソファに座って口を開く。

「今日は君にーーーいや、君たちにお礼の電話をするためにかけたんだ。君たちがいじめてくれたおかげで、蕾が手に入ったんだからね」

そう話す優斗の顔は、ドス黒い闇を持った笑みだった。蕾には見せたことのない顔だ。

『入学式が終わってすぐ、あの子以外で集められてそんな話をされた時は驚きましたよ。まあ、テストの範囲を教えてもらえて、テストの点数を十点上げてもらって、成績もよくしてもらえたんでラッキーでしたけど』

「あのいじめがなかったら、蕾は俺じゃない男のところに行ってしまうかもしれなかっただろ?手に入れるために必死だったんだ」

『あの子、とんでもない男に捕まっちゃいましたね。いじめの黒幕と結婚することになるなんて』

「黒幕じゃない。蕾を救った英雄さ。……蕾が起きるといけないから、切るよ」

電話を切り、優斗は寝室へと戻る。そこには幸せそうな顔をして眠る蕾がいた。優斗は先ほどの黒い笑みとは違い、幸せそうな表情で彼女を抱き締め、眠りにつく。

囚われた妻は、愛する旦那の裏の顔を知ることは永遠にないだろう。
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