悪い病気は治さなきゃ
「ハァ……」

病室から見える景色を変わることのない景色を見て、水野未来(みずのみく)はため息をつく。三ヶ月近くも病院という社会から離された場所にいれば、嫌でもため息が出てしまうものだ。

未来は生まれつき大きな持病を抱えており、入退院を繰り返す日々だった。手術が可能になるほどの体力がなかなかつかず、十七歳になってようやく手術を受けることができたのだ。

『病気の手術をするとなると、普通の高校へ通うのは難しいかもしれないね。普通の高校だと、学校へ行かないと単位が貰えないでしょ?』

主治医の先生にそう言われ、未来はオンラインで学べる定時制の高校に通っている。暇つぶしに高校の課題をしていると、病室のドアがノックされた。

「失礼します」

そう言って入ってきたのは、未来の主治医である宮水高嶺(みやみずたかね)だった。艶やかな黒髪に整った顔立ちをしている彼は、この病院の跡取り息子であり、優秀なため、本来なら研修医という立場でありながら、未来の主治医となっている。
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