夕暮れ、人の消えたこの街で。
ゴーン…ゴーン…

どこからか、大きな鐘の音が聞こえた。

俺は自身が揺らしていたブランコから飛び降り、当たりを見回した。

いつもの公園に、いつもの友達。

何ら変わりない風景だ。

言うまでもなく、鐘などどこにも見当たらない。

「…今の、なに?」

友達の1人が、俺達に問いた。

若林夏帆。クラスで“天使”と呼ばれるほどに、ふわふわとした印象で、可愛らしい女の子だ。

「さぁ、知らね。それより、俺たちそろそろ帰った方がいいんでねぇの?」

答えたのはもう1人の友達である、代谷彰人。

俺たちは普段から、この3人で、よくこの公園へ遊びに来ていた。

「あぁ、そうだね。僕も門限6時だし、早く帰らないとお母さんに怒られちゃう。」

その頃の俺は、今の印象とは打って変わって、大変大人しく、小心者の男子だった。

一部の女子からは、「かわいい」だの、「優しい」だのと、少々人気があったようだが、生憎、色恋沙汰には全く興味のない、当時では珍しいタイプの男子生徒だった。

俺たちはそのまま帰ることになり、公園の入口で分かれた。

最初に違和感に気づいたのは、帰り道を歩き始めて、少したった頃だった。
< 4 / 8 >

この作品をシェア

pagetop