一縷
とりあえず謝ろう、と頭を下げる。
「急に消えたから驚いた」
「すみません、急用ができまして……」
「そうか。あ、俺はこれを返そうと思っていたんだ」
差し出された諭吉さん一枚。
え、とそれを見つめる。
「お金、貸しました?」
「覚えてないのか? ここで会計を持ってもらった」
「な、何故……?」
「手持ちが……クレジットしかなくて」
「あ! その日、クレカの接触が悪くて、お断りしてたんですよ!」
途中、店員さんがビールを届けにきて、話に加わった。
この時間に主にシフトに入っている店員さん。きっとわたしのハイボール好きも把握されている。