一縷
それで払えなくて、わたしが代わりに払ったと。
そういうことか、と諭吉を受け取りそうになるが。
「お釣りを。いくらですか?」
「無い」
「いくらですか?」
今度は店員さんへと視線を向ける。
困ったように首を傾げた。先月の支払いのことなんて一々覚えているはずもない。わたしも覚えてない。
「あ、調べます?」
「いや、そこまでは。八千円くらいお返しすれば良いですかね……」
「いや、二人分だ」
財布を取り出し、止まる。
「わたし、お邪魔とか……してないですかね」
二人って、彼女とかじゃ。