一縷
この人が支払いするところに割って入り、会計を持ったなんて。
「邪魔? いや、相手が帰ってしまった後だったから、助かった」
「ああ、それなら……」
良くない。
何でわたし、この人の家のベッドで寝てたの。
和やかな雰囲気になりそうなところを立ち止まる。店員さんは注文を取り、行ってしまった。
残された、二人きり。
「ハイボールか?」
「え、ああ、いえ」
少なくなったグラスを示され、首を緩く振る。
焼き鳥もこれで最後だし。
「そろそろ、帰ります」
きょとんとした顔を向け、男はわたしの顔を覗き込むようにして傾けた。