一縷
執行役員。なんか偉い人みたいな、肩書き。
一般企業に勤めた経験が無いので、どれほど偉いのかよく分からないけれど。
誰もが知る、電機メーカーの会社だ。
当たり前だけど、本社。
そういえばうちの近くに大きいビルが建っていたな、と思い出す。
名刺も財布にしまい、新しく置かれたハイボールを一口飲んだ。
「いくつ? 差し支えなければ」
「四月に28になります」
「……冗談か?」
「今のどこに面白い要素が?」
絹笠さんは目をぱちくりさせてわたしを見る。何だ、何か言いたいことでも。
「がくせ……いや、とてもおさな、若く見えた」