一縷

度重なる失言と気遣い。
まあ、もう慣れた。

「よく大学生って言われます。大学のときは高校生って言われてました。年齢確認は今もされます」
「……そうか、気にしてるなら悪かった」
「平気です。絹笠さんはおいくつですか?」

一切れ残った卵焼きを頬張る。

「今28だ、から多分同い年で一学年違いだな」

改めて絹笠さんを見る。

方やクリーニング店員、方や企業の偉い人……。

ここまで来ると、憧れすら湧かない。

アイドルとか俳優とかと同じだ。テレビの中で動いている、手も声も届かないひと。

しかし、律儀にお金を返しに来てくれるひと。

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