一縷
古傷
「おはようございます」
「酷い顔ねえ」
「昨日、ちょっと飲みすぎた、ような……」
大竹さんが心配する表情を見せる。
わたしはひらひらと手を振った。
「それだけじゃなく、人に絡まれた、というか」
「え? 男? 男の人?」
「何でちょっと嬉しそうなんですか」
「だって羽巣ちゃんに男の影なんて」
宛ら近所の噂好きのおばさんである。いや、そうであるんだけど。
きっとパートさんの間で広まるだろうな、と思いながらレジを開けた。
あの後、絹笠さんはわたしを徒歩で送ってくれた。
散々近いから大丈夫だと言った後で、だ。
「ここの、上です」