一縷
美人局の逆バージョンみたいので、わたしが頷けば、絹笠さんの本命彼女が現れて修羅場になる、とか。奥さんが現れて慰謝料を請求される、とか。
考えれば考えるほど血の気が引く。
「えっと、そもそも私のどこがそんなに良いのか……」
掌を見せて降参を表す。
「どこ……」
「無いなら結構です」
「底抜けに明るくて、楽観的なところ」
指先を掴まれて、緩く手を繋がれる。
そんなに明るいかな……まあ、楽観的な部分には心当たりがある。
クリーニング屋だって、なんとかなるでしょ、と思って継いだ。