一縷
「あと笑った顔がかわいい」
「え」
「寝てる顔もかわいい」
「もう、いいです! 帰りましょう!」
コートを取り、帰りを促す。
ありがとうございました、と背中に声をかけられ、そのまま店を出た。
無銭飲食……? ではない。
「お金、払います」
きっとお手洗いに立った際に支払いを終えたんだろう。紳士か、紳士だ。
財布を出そうとするわたしの腕を制し、まあまあとじゃじゃ馬を導くように道を進む。
「じゃあ家に来て飲むか」
「へ」
「嘘に決まってるだろ」
可笑しそうに笑う絹笠さんに手首を掴まれたまま。