一縷

お酒を飲めるようになって数年。吐いたり眠ったりすることはあったけれど、記憶を飛ばしたことは無かった。

浮かれすぎだ。記憶を集めたいのに、焦りすぎて思考が纏まらない。

誰かも分からないし。
どこかも分からないし。

広いベッドだ。同じように部屋も広い。

この人の部屋なんだろう。きっと、たぶん。

ベッドの上に投げられたようなトップスを見つけて急いで回収、着衣する。

もう、この際、どうでもいい。
この人も何かあっても、なくても。
きっともう絶対に会わないし、ここに来ることもないし。

帰ろう、あの狭い家へ。

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