一縷

ボトムスも見つけて、静かに着る。

「……帰るのか?」

急に尋ねられ、口から心臓が出るかと思った。

恐る恐る振り返る。部屋の入り口のハンガーに、コートが掛かっているのを見つけた。

男は上半身を起こしながらこちらを見ていた。

色気はある、けど本当に知らない人。

「あ、帰り、ます」

でも心のどこかで、こんな人がわたしとどうこうなるわけもないか、と落ち着いてくる。

「昨日、今日予定ないって言ってなかったか?」

昨日のわたしは、この人と会話をしたらしい。

どこまで、何を話したの……。

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