一縷
「あの、何かありました?」
メッセージを無視しておいて何かあったのか、では無いだろうと、わたしなら思うけど。
『連絡が途絶えたから』
「……ですよね」
『今、大丈夫?』
「はい、大丈夫です」
昼下がり。きっと昼休憩なんだろう。あの時と同じような時間だ。
わたしは事務所を出て、裏口から路地裏に出る。
日陰は肌寒い。でも、日の当たる場所へ出ようとは思わなかった。
『羽巣さんの声が聴きたくて』
その言葉に、どきりとしてしまう。
うるさいぞ、心臓。
『仕事、忙しいのか?』
「……まあ、とても、はい」