一縷

沢村さんの要件を終えて、アイロン室へと顔を出す。
それに気付いた富士さんは手を止めずにこちらを見た。

今まで絹笠さんとあったことを話した。最初の同衾事件を除いて。

「付き合っちゃえば良いのに」
「……富士さんまでそんなこと言う……」
「他人の恋愛は総じて面白くてどうでも良い」
「真義ですね」

わたしもこの前まではそうして生きてきたのに。学生さんたちの恋愛を楽しく聞いていたのに。

「合わないと思うんですよ。価値観とか、いろんなものが」
「でも普通に連絡取り合ってるんでしょ」
「いや、それは多分、向こうが合わせてくれているからで」

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