一縷

「それなら送る……じゃなくて、先に返す」
「返す?」
「ああ、払ってもらった分」

何を返されるのか、見当もつかない。払ったって、お金? わたし、給料日だからって浮かれて何を買っちゃったの?

「あ、あの!」

ベッドを出ていこうとするその人を呼び止める。

「か、返さなくて結構なので!」
「いや、それは良くない」
「それより先に、シャワーとか、浴びてきてください!」

きょとんとした顔がこちらを向く。

「シャワー浴びたいのか?」
「え? あ、いや」

正直とても浴びたい。なんだか自分から煙や焼き鳥の匂いがしている気がする。

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