一縷

松田くんを見送ったのと入れ違いに、久しぶりに見た姿が現れた。

「……お久しぶりです」
「ああ」

絹笠さんは松田くんの行った先を見る。

「仕事、終わったか?」
「……まだ、です」
「じゃあ待ってる」
「いえ、あとは明日やります。入ってください、寒いので」

シャッターを上げた。

「お邪魔します」

事務所に通し、ソファーに座って貰う。

「コーヒーで良いですか? インスタントしかないんですけど」
「要らない、から座ってくれ」

肘を柔く引っ張られ、座らされた。

角と角に、斜向かいになる。

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