一縷
手を引かれ、顔を上げる。
絹笠さんが嬉しそうな顔をしていた。
「付き合ってくれ、」
「最後まで聞いてください」
「……はい」
手が下げられる。一呼吸置き、続けた。
「絹笠さんが、何故わたしと? って思うんですよ。だって、きっとわたしより明るい人なんてそこら辺に一杯いますし、可愛くて綺麗な人も、有能な人も」
それこそ、全てを兼ね揃えた若い人だって。
言いたいことは伝わっているか、と絹笠さんを見る。
「居ないだろ」
何も納得していない様子だ。
「羽巣さんは、羽巣さんだけだ」
そんな、当たり前のことを説かれた。