一縷
胸がきゅーっとなる。
「いつか、絶対に、何かお返しします」
これに見合う何かなんて、無いかもしれないけれど。
「もう、返されてるけどな」
「え、何をですか」
「いや、何でもない。遅くまで居座って悪かった」
絹笠さんが立ち上がるのと同時に、時計を見る。思ったより遅くて、わたしも視線を戻した。
「こちらこそ、引き止めてすみません。お疲れなのに……」
「羽巣さんも」
頬に手が触れる。目元を指で撫でられ、止まった。
「ちゃんと休んだ方が良い」
忙しかったのが見抜かれている……。
掌を見せて、降参のポーズ。