一縷
「やっとバイトさんが入ったので、漸く休めます」
「さっきの男子学生?」
「そうです」
「あんまり……」
言いかけて止められ、続く言葉を待つ。
わたしが待っているのに気付いたようで、絹笠さんは少し笑った。
「二人きりにならないで欲しいと思ったけど、俺が言えるようなことじゃないな」
それはわたしにもブーメランなので、一緒に笑う。
そういえば、と思い出した。
「わたし……あの夜、何を話しました?」
出会った、あの日の夜のこと。