一縷
歩道と車道を分ける縁石に乗って、平均台のように歩き始める。
「お金と恩はまわすものなんですよ」
「……返すのではなく?」
「わたしはあなたにまわしました」
こちらを振り向き言った。同時にふらふらし始めた片手を掴む。
「危ないからおりて」
「手、離さないでくださいね!」
掴んだ手が掴み返される。
それの何に信頼を得たのか、得ようと思ったのか。
「ああ、絶対」
思わず笑っていた。
「あなたがこれから誰かを助けて、それが回り回ってわたしに返ってくるんです。それがすごく楽しみ」
歩き出す彼女が言うので、その手を引っ張る。