一縷
今度は縁石から静かにおりた。
きょとんとこちらを見上げる。
こんな大学生くらいの彼女に金を借りるとは、社会人として情けなさすぎる。
「じゃあせめて、送らせてくれ」
「えー、すぐそこなんで大丈夫です」
「いや、ほら、乗って」
これは傍から見て大丈夫な図だろうか。
酔った学生を誘拐する社会人にならないか。
タクシーを止めて彼女を乗せる。
「どこまで行きましょう」
「家、どこ……」
すかー、と聞こえた寝息。ばっと隣を見る。シートに座り、窓の方に寄り掛かり眠っていた。
……寝ている。
三度見たが、寝ている。