一縷
「お、起きてくれ」
「お客さん?」
「とりあえず、東区の方にお願いします……」
自分の家の方面へと頼んだ。
その間、何度も起こすのを試みたが、全く起きない。こんなに車で熟睡できるのも何かの才能か。
結局、家に着いた。
マンションの前で降ろされ、彼女も一緒に置いていかれた。
彼女を傍らに抱え、仕方なくマンションに入っていく。
このまま部屋に入れて良いものなのか。犯罪にならないのか?
「あ!」
部屋の前で彼女が起きた。その声の大きさに驚く。
「今何時?」
「十一時、だけど」
腕時計を見て答える。