一縷
「給料日に、かんぱーい!」
……どこまでも陽気だ。
ごくごくと水を飲み干した。
「ごちそうさまでした!」
グラスをテーブルに置いて、手を併せる。
「給料日、そんなに嬉しかったのか」
「そりゃもう。毎月、お給料を出せるのが有り難いっていうか。本当に、働いてもらえるのが有り難いっていうか」
出せる? 出される、のではなく?
しかし酔っぱらいの世迷言だ。彼女は笑ってこちらを見た。
「ということで、お邪魔しました! 帰りまーす!」
「え」
「あれ、玄関どっちだっけ」
「帰るのか? 帰れるのか?」
あっちか、と言いながら玄関の方へ進む。何も聞いていない。