一縷

「も、もしか、お前、無銭……」
「違う。クレジットしか持ってなかったから、後ろに並んでた人が払ってくれた」
「まじか、ラッキーだったな」
「まだ返せていない……」
「相手の連絡先は?」

知っていたらすぐにでも返している。

あの朝、一番最初に連絡先を交換していれば。
なぜ俺は風呂場へ行ってしまったのか。

いや、でも風呂に入りたいと言われたので……。

「特徴とかは?」
「特に……あ、給料日を大層嬉しがってた」
「あーそれなら」

次の給料日もあの居酒屋に来るかもしれない、と助言を貰った。


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