10year
『ねぇ、麻衣。お見合いする気はない?』
お風呂からあがって、冷蔵庫から取り出した缶ビールを2口くらい飲んだ処で親友のマドカから電話が掛かって来た。
携帯に出た私に開口一番で言い放ったのはその言葉。
「はぃっ?」
何をいきなり・・・と、気持ちと正直な言葉が私の口をつく。
『いや、だからさ。お見合いしないかな~と思って。どうせ、まだ彼氏も作ってないんでしょ』
ぐっ・・・。痛いところを衝かれた。
「お見合いなんて面倒じゃん。それに結婚とか、まだ考えてないから」
嘘。考えてないとかじゃない。本当は結婚したい。でも、好きになれる人が居ないだけ。あの人以上に・・・。
『それって・・・』
すごく言いにくそうに、言葉を選ぼうとするマドカの雰囲気が電話の向こうからも伝わってきた。
「お察しの通りです」
『まだ癒えてないのか・・・』
「情けないよね。あれから10年も経つのに」
『10年かぁ。今頃、何してるんだろうね』
「ちゃんと生きてるのかな」
『生きてるでしょー!あ。でも、ちょっと体弱そうだけど』
「会いたいな・・・」
ずっと我慢していたその気持ち。会いたくて堪らなくて。
でも、それが叶わないことくらい分かってた。
『こっちで、探してあげるよ!ほら、これでも日中は暇な主婦だから』
「えっ。でも・・・。どうやって?」
『もちろん、当時の先生達に』
「む、無理でしょ」
うん。無理に決まってる。
だって、10年前。突然姿を消したから、担任に居場所とか連絡先とか原因を聞いたのに教えてくれなかったんだもん。
『なんで無理って決め付けるの?それ、麻衣の悪いトコ!』
「だって。あの時、私が必死に聞いても、日向先生、何一つ教えてくれなかった・・・」
日向先生とは、私が高1・高3の時の担任だ。
『それは、麻衣がまだ生徒だったからじゃない?』
「セイト?」
『うん。現役の生徒にはナカナカ教えられないと思うよ。辞めた理由なんて』
確かにその通りかもしれない。私はあの時、高校2年生だった・・・・。
「そ・・・だね。この10年、そんな簡単なことさえも気づけなかった」
『恋は盲目だからね』
「ふふ・・・。何それ」
『笑った』
「え?」
『片瀬先生の話すると、必ず落ち込みモードだから』
「癒えてないからね~」
マドカとはその後、他愛も無い話を沢山して、電話を切った。
最後に『ちゃんと見つけ出すから』って言葉も付け加えてくれて。
いつもマドカは、過去から抜け出せない私を気遣ってくれる。
そして、私に彼氏が出来る度に、自分のことのように喜んでくれた。
短大に入ってすぐに出来た彼の時も、社会人になってから付き合った2人の彼の時も。
その度に私は呪文のように願ったことがある。
-------お願いだから、もう私を困らせないで。惑わさないで。
-------私はもう、あなたを忘れたい。
-------だから、この人と幸せにならせて。
私の願いは、いつも虚しく散っていった。
みんな、私には勿体無いほどデキタ彼氏だった。
それなのに、私は無意識にどこかであの人の影を探していた。
会いたい。毎日、そう思ってる自分がなんだか情けない。
10年も会っていない人に、未だ恋しているなんて・・・。
恋愛ドラマにも出てこないよ、こんな主人公。
お風呂からあがって、冷蔵庫から取り出した缶ビールを2口くらい飲んだ処で親友のマドカから電話が掛かって来た。
携帯に出た私に開口一番で言い放ったのはその言葉。
「はぃっ?」
何をいきなり・・・と、気持ちと正直な言葉が私の口をつく。
『いや、だからさ。お見合いしないかな~と思って。どうせ、まだ彼氏も作ってないんでしょ』
ぐっ・・・。痛いところを衝かれた。
「お見合いなんて面倒じゃん。それに結婚とか、まだ考えてないから」
嘘。考えてないとかじゃない。本当は結婚したい。でも、好きになれる人が居ないだけ。あの人以上に・・・。
『それって・・・』
すごく言いにくそうに、言葉を選ぼうとするマドカの雰囲気が電話の向こうからも伝わってきた。
「お察しの通りです」
『まだ癒えてないのか・・・』
「情けないよね。あれから10年も経つのに」
『10年かぁ。今頃、何してるんだろうね』
「ちゃんと生きてるのかな」
『生きてるでしょー!あ。でも、ちょっと体弱そうだけど』
「会いたいな・・・」
ずっと我慢していたその気持ち。会いたくて堪らなくて。
でも、それが叶わないことくらい分かってた。
『こっちで、探してあげるよ!ほら、これでも日中は暇な主婦だから』
「えっ。でも・・・。どうやって?」
『もちろん、当時の先生達に』
「む、無理でしょ」
うん。無理に決まってる。
だって、10年前。突然姿を消したから、担任に居場所とか連絡先とか原因を聞いたのに教えてくれなかったんだもん。
『なんで無理って決め付けるの?それ、麻衣の悪いトコ!』
「だって。あの時、私が必死に聞いても、日向先生、何一つ教えてくれなかった・・・」
日向先生とは、私が高1・高3の時の担任だ。
『それは、麻衣がまだ生徒だったからじゃない?』
「セイト?」
『うん。現役の生徒にはナカナカ教えられないと思うよ。辞めた理由なんて』
確かにその通りかもしれない。私はあの時、高校2年生だった・・・・。
「そ・・・だね。この10年、そんな簡単なことさえも気づけなかった」
『恋は盲目だからね』
「ふふ・・・。何それ」
『笑った』
「え?」
『片瀬先生の話すると、必ず落ち込みモードだから』
「癒えてないからね~」
マドカとはその後、他愛も無い話を沢山して、電話を切った。
最後に『ちゃんと見つけ出すから』って言葉も付け加えてくれて。
いつもマドカは、過去から抜け出せない私を気遣ってくれる。
そして、私に彼氏が出来る度に、自分のことのように喜んでくれた。
短大に入ってすぐに出来た彼の時も、社会人になってから付き合った2人の彼の時も。
その度に私は呪文のように願ったことがある。
-------お願いだから、もう私を困らせないで。惑わさないで。
-------私はもう、あなたを忘れたい。
-------だから、この人と幸せにならせて。
私の願いは、いつも虚しく散っていった。
みんな、私には勿体無いほどデキタ彼氏だった。
それなのに、私は無意識にどこかであの人の影を探していた。
会いたい。毎日、そう思ってる自分がなんだか情けない。
10年も会っていない人に、未だ恋しているなんて・・・。
恋愛ドラマにも出てこないよ、こんな主人公。