黒翼(ブラックウィング)
悠と諒圭は教室に入って自分の席に座っていた。嘉耶とは学年が違うため別れていた。
教室にいる二人はお互いに何も話さず自分の席でスマホを弄っているだけ。それはお互いがお互いに干渉しないようにしているみたいだ。傍から見たら異様な光景でしかない。
黒翼と言われ三人で行動を共にしているのに関わらず、悠と諒圭は周りから見ても仲がいいとは言えない。そんな感じだ。
それなのに、一緒にいる理由はなんなのか。それは三人だけしか分からないことだろう。
悠はスマホをジッと見て眉に皺を作った。
「チッ」
悠の小さな舌打ちは誰にも聞こえないだろう。
教室のドアがガラガラと音を立て開かれると、担任の男の教師が入ってくる。その男は出席を確認すると、すぐに教室を出ていった。
その後、教室は教師が入ってくる前と変わらず騒がしくなる。
悠は一人教室を出ていく。悠が出ていくのを見かけた諒圭は席を立たず、ただ自分の席で悠の姿が見えなくなるまで目で追うだけだった。
教室を出た悠は人気のない廊下でスマホを取り出し、電話をかける。
ツーコールで出た電話の相手の声は違う声だった。
「よう、鴉《カラス》さん」
「用件はなんだ」
「おいおい、第一声がそれかよ。他に言うことがあるんじゃないか?自分の妹が捕らわれているんだぞ?」
「用件だけ言え」