黒翼(ブラックウィング)



「可哀想だな。お前のお姉ちゃんは妹の心配をしてくれないみたいだぞ?」

「するわけないでしょ!来なくていいから!罠だから!」


電話越しで叫ぶ女の子は自分の心配よりも悠の心配をしているようだ。


「あー、めんどくせーな」



怠そうな男の声に悠は苛立ちを覚える。


「無視するな。桃花(モモカ)を使ってアタシを呼び出そうとしてんだろ?用件をさっさと言え」

「随分と上から目線じゃねーか。今の自分の立場とこの状況がわかってんのか?今ここでお前の妹を殺すこともできるんだぞ?」

「桃花を殺したとき、アタシがお前を殺してやる」

「ほう、お前に俺が殺せるのか?」


笑って馬鹿にしている男。それをものともしない言いようで悠は返す。


「あぁ、殺せるよ。お前ら全員、血祭りにしてやる。血飛沫(チシブキ)を浴びたアタシはそのままお前らの墓を作ってやるよ」


電話越しであるはずなのに、目の前に悠が浮かびやりかねないと恐怖した。きっと、誰もが男と同じ境遇に立たされるだろう。


男は自分の命を惜しみ、恐怖に苛まれ用件を話す。



「13時、○○倉庫にお前一人で来い。ある族を一人残らず倒すことが出来たら妹を解放する」

「その族ってのはどこだ」

「それは言わねぇ。自分の目で確かめろ」






そう言われ、一方的に電話を切られた。

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