黒翼(ブラックウィング)
悠は諒圭の手を解き、足早にその場を去る。
諒圭はチッと舌打ちをして悠の後を追いかけようとすると、電話がかかってきた。電話の相手は嘉耶からだ。
「なんだ」
「随分と怒っているな。何かあったか?」
「…なんもねーよ」
嘉耶の質問に対して諒圭は先程の悠とのやり取りのことを話すことはなかった。
それは、嘉耶に話せば巻き込まれるということよりも悠の所へ自ら巻き込まれに行くに決まっているため、必然的に諒圭自身も巻き込まれる形になるからと思っての事。
「なんもないの声ではないけど、まぁいい。今悠と一緒か?」
「アイツなら知らねー」
電話越しに嘉耶はすぐに察した。
悠と何かあったのだと。
「そうか。リョウ、今どこにいる?」
「旧校舎に続く廊下だ」
「そこで待っててくれ。俺もそこに行く」
「は?何でだよ?」
「後で話す」
嘉耶はそれだけ話すと電話を切っていた。
電話を切られた諒圭は再び舌打ちをすると、ポケットに手を突っ込み嘉耶が来るのと窓際に寄りかかり待つ。