黒翼(ブラックウィング)
悠が学校を去って行くちょっと前のこと。
諒圭と嘉耶は合流していた。
「お待たせ」
「何だよ」
諒圭は嘉耶に対してあからさまに嫌な顔を見せる。
分かっているからだ。嘉耶が何を言い、これから何をするのかも。
「悠と何があった?」
「何もないって言ってるだろーが」
しつこいと付け足すと嘉耶も目でしつこいと言っているのが分かる。どちらも引きはしない駆け引きが続く。
そして、先に諦めたのは嘉耶の方だ。
「リョウから何があったかは聞かない。悠に直接聞きに行くよ。リョウも来いよ」
「はぁ?なんで俺まで一緒に行く必要あるんだよ」
「じゃあいいよ。先に俺が悠を倒すから。リョウを見る限り今の悠は何かに巻き込まれていて、それに関わりたくないから悠と距離をとっているんだろ?それは俺にとってはチャンスでしかない。お前が行かないのであれば隙をつき、俺が先に悠を倒して見せる」
この二人が悠と共に行動している理由、それは悠に挑み負けているから。
普通であれば一緒にいるという考えは持たないだろう。しかし、この二人は悠に負け、悠を敵対にながらも一緒にいる。
それは悠自らが二人に声をかけ、いつでも自分に挑み倒すように言ったから。倒せるもんならやって見ろ……と。
見下されていることに怒りを感じたものの二人はそれに乗ったのだ。見返してやると、調子にのるなと意味を込めて。
そして今こうして一緒にいるわけだが、まだ一度も倒してないどころかケガ、拳一つ当てられてはいない。
だからこそ、一緒に居ながらも敵として見ているため、二人の中ではどちらが先に倒すのかという勝負にもなっている。