黒翼(ブラックウィング)
諒圭は挑発を込めて言う嘉耶にチッと舌打ちをし、「性格わりぃ」と愚痴を零した。
嘉耶はそれをOKの返事だと受け取り、悠の元へ行くべく悠の教室に向かうもそこにはいないので、電話をかけ悠の行き先を追う。
1回目に電話したが繋がらず、2回3回とかけてみるが全く出ない。
「でねぇのか?」
「でないね」
「お前がかけている事分かってでねぇんだろ」
それか、もう巻き込まれているのかと嘉耶は思いつつ、もう一度悠に電話をかけるとツーコールででた。
「しつこい」
「悠がでないからでしょ」
「かけてくるな。今、忙しいんだ」
「何に巻き込まれてるの?」
「知る必要ない」
悠は嘉耶を冷たく突き放すも、意に介さない嘉耶は悠に告げる。
「俺の目的はたったひとつ。悠を倒すこと。悠が何かに巻き込まれているのであれば俺としては好都合。簡単に隙を狙えるからね」
それを聞いた悠は怒りで拳が震える。どいつもこいつも自分を舐めすぎて見下していることに。
「簡単にだと?ふざけるな。アタシの弱っているところを狙おうと、卑怯な手を使わなければ勝てる余地もねー奴が倒すだの何だのと抜かすんじゃねーよ」
それに対して嘉耶は今の悠に焦りがあるのだと感じた。普段の悠ならば、「なら、やってみろ」と余裕を見せながら挑発をかけてくるはず。
でも、その余裕が感じられないということは今回、悠にとって何かがあるのだと分かる。そして、悠がこんなに焦る理由も何となく察することができる。