黒翼(ブラックウィング)
「抜かしてるつもりは無いよ。それより、随分焦ってるね。もしかして桃花ちゃんに何かあった?」
悠の心が乱れることと言えば、妹の桃花の身に何かあった時。
前にも桃花の身に危険が及んだ時に悠は相当焦りと共に怒りを露わにしていた。
だから、嘉耶と諒圭は分かっている。
悠の中に桃花の存在、いやそれだけではなく今の"家族"という存在が大きいことに。
だから、嘉耶は桃花の名前を出した。
悠の反応見るために。
悠は冷静を取り戻し嘉耶に嵌められたと思い舌打ちをした。
「お前に関係ない」
それでも、悠は突き放した。
「じゃあ、場所だけ教えてよ。邪魔しないし覗きにいくだけだから」
「それがうぜーんだよ。お前らに構っている暇はない。知りたきゃ自分で調べろ」
そう言って悠は電話を一方的に切った。嘉耶はスマホの画面を見ると通話画面は消えており、画面に映し出されているのはホーム画面。
「アイツ、なんて?」
「俺らに構っている暇はないから場所はもちろん、状況も教えないって。知りたければ調べろだってさ」
「そーだろーな。諦めろ」
諒圭にしたら面倒事に巻き込まれなくてすむと思い安心している。しかし、嘉耶は悠の言葉に府に落ちてない様子だ。
「諦めるわけないだろ。桃花ちゃんが関わっていることは分かったんだ。悠が調べろと言ったのであれば調べるまでだ。どう調べればいいか、もう分かるからな」
諒圭はこれ以上嘉耶に何を言っても聞かないことが分かり、ひとつ舌打ちをして嘉耶についていこうと決めた。