黒翼(ブラックウィング)
「もういいだろ。1時間も外にいる理由なんてねーし、十分だろうが。戻るぞ」
リョウと呼ばれた男は立ち上がり女を見下しながら言う。
「悠、満足したか?」
女と一緒に座っている男は女の名前を呼び、小さな子供に話しかけるような親のように優しくして問いかける。
「あぁ」
悠と呼ばれた女は組んでいた足を地につけ、腰を持ち上げてリョウの横を通り過ぎ前を歩く。その後ろに続いて男2人が足並みをそろえて歩みを共にする。
3人は住宅街を抜けて辺りが見渡せる河原を歩く。
「黒羽悠、明石嘉耶、野々原諒圭」
前にはスキンヘッドの男を中心に十数人の男達が立ち、怒りを見せる。
「一昨日は下の奴等が世話になったな」
「邪魔だ。退け」
お前達に興味はないと言う諒圭の言葉にスキンヘッドの頭に青筋が浮き上がる。
「テメェ、調子に乗るなよ!!やれ!」
その言葉で後ろにいた男達は3人に拳を作り向かってくる。
悠の横に並んでいた嘉耶と諒圭は悠を護るかのように前に立ち、男達を倒していく。
ポケットに手を突っ込み、その様子をただの傍観者として見る悠には余裕というよりも、どうでもいいことだと思い、見慣れた光景だと言わんばかりだ。