黒翼(ブラックウィング)
15分も経たないうちに十数人の男達は動けずにその場で倒れており、残りはスキンヘッドただ一人のみとなっていた。
「黒羽はやっぱり守られてんのか。何が最恐だ。所詮女だから喧嘩すらできねーんだろ」
今の状況に怯みながらもスキンヘッドは挑発をかけてくる。悠は表情一つ変えず、静かに2人の間を通り抜けようとするのを嘉耶が止めた。
「安い挑発に乗る必要はない」
160cmの悠に対して18cmの身長差のある嘉耶を見上げながら、女としては少し低い凛と澄んだ声で言う。
「挑発に乗ってない。思い知らせてやるだけだ」
「それが挑発に乗っているってゆーんだよ」
ツッコミを入れる諒圭の顔など見向きもせずに視線は嘉耶に向いたまま。
嘉耶は諦めたかのか溜め息をつき道を作る。諒圭も何も言わず振るっていた拳をポケットの中に入れ1歩後ろに下がる。
それを見たスキンヘッドの男は悠が自分へと向かって来ることに余裕を見せる。女の力で男に勝てるものかと表情を見れば心を読もうとせずとも分かる。
「悠」
声の主である嘉耶に顔だけ向ける悠。
「手加減だけはしろよ?病院送りなんてしたらまた目を付けられるぞ」
「問題ない。本気を出すほどコイツに力はない。学習能力ないからな」
見下され、馬鹿にされたことに一層腹を立てたスキンヘッドの男は怒りを露わにして悠へと向かって来る。